ヨーロッパ特許(EPC)

ヨーロッパ共同体商標制度と異なり、現在の所EU圏のヨーロッパ特許は存在しておりません。所謂ヨーロッパ特許は35のヨーロッパの国々が署名しております欧州特許条約(EPC)に従ってなされる統一出願及び審査手続きを示すのみです。EPCメンバーはEU加盟国とは同じではありません;スイス、リヒテンシュタイン、トルコ、モナコ及びアイスランドを含む非EU加盟国はEPCメンバーです。

ヨーロッパ共同体商標とは異なり、ヨーロッパ特許(以下“EPC特許”)は自動的にEU圏において有効且つ執行可能ではありません。むしろ、EPC特許の取得後、本EPCを出願人が指定するEPCメンバー国において有効且つ執行可能にする為、関連する国レベルでの手続きが完了する必要があります。

EPC vs. PCT(特許協力条約)

EPCに類似する他の国際的特許出願制度は141カ国が署名した特許協力条約(“PCT”)に従って成立しております。PCTは、国際的に特許出願の届出に係り統一された手続きを提供致します。しかし、EPC手続きと異なり、PCTは統一された審査制度は提供致しません。特に、PCT出願の届出及び先行発明の調査は国際レベルにて取り扱われますが、出願人が指定するPCT加盟国の特許当局が審査及び特許権の付与を行います。

PCT出願の主な長所は、出願人は、一つの言語及び一つの当局に対する一つの出願により国際的に特許を出願出来ることです。PCT申請に基づく優先権保護は出願日又はそれより早い優先日から起算して30ヶ月間です。これは、特許権を出願するか否か及びどの国で特許権を出願するかを決定する以前に、出願者に関連する市場の要 を考える更なる時間を与えます。加えて、PCT出願の場合、出願が指定する国(々)の個別の審査手続きに入るまで、出願人は定期料金及び(翻訳等の)関連費用を支払う必要がございません。

EPC及びPCT間の最も顕著な違いは、EPC出願は欧州特許庁によりEPC規則に従い検討及び審査されますが、PCT申請は指定された夫々のPCT加盟国の特許当局により彼らの個別の国内法により検討及び審査されます。

EPC Procedure
EPC手続き
  • Application 申請

    EPC制度は特許可能な発明にのみ適用されます。EPC特許に係る出願は直接欧州特許庁(“EPO”)又はEPOに対する更なる申請に係りEPC加盟国の如何なる特許当局に申し込むことが出来ます。EPC特許出願は、英語、フランス語又はドイツ語にて申し込み可能で、当該申し込み言語が全ての手続きにおいて用いられます。

    EPCは、若し出願人が如何なるパリ条約(工業所有権の保護に関するパリ条約)加盟国(台湾は含まれない)における特許の出願を最初に申請した場合、当該出願人に12ヶ月の優先権保護を与えます。

    出願におきまして、出願人は特許保護をもとめるEPC国を指定するものとします。実務上は、多くの出願人は最初、全てのEPC国を出願に含め、そして、その後の段階にて、特許保護の正確な範囲を決定します。

    (注:2009年4月1日より、全てのEU加盟国が指定されることになっており、出願人は指定を望まない国を明示的に除外し無ければなりません。全ての加盟国の指定料金は500ユーロです。この項目の更新をお待ち下さい。)

    出願申請がされた後、EPCは先行発明検索を行い、そして、出願人にその結果を提供します。出願日から始まる18ヶ月以内に、当該先行発明調査報告が当該出願人に提供されたかに拘らず、EPC特許出願は公示されます。特許出願の公示と共に又はその後に、当該先行発明検索も又公示されます。

    先行発明検索報告の公示から6ヶ月以内に、出願人は特許保護が求められる指定するEPC国を関連費用の支払いを以て確認します。(上記の注を参照願います。)この段階の後は、指定するEPC国を変更することは出来なくなります。この6ヶ月の間に、出願人は又特許出願の審査に係る申し込み及び審査費用の支払いをしなくてはなりません。出願人がEPCのこれらに関する通知から1ヶ月間に、これらに従わなかった場合、出願は取り下げられたと見なされます。

  • Examination and the grant of patent right 審査及び特許権付与

    EPC特許出願の申請はEPCによって執り行われます。審査手続きの間、EPC審査官は出願人と可能性の有る拒絶理由を話し合うことが出来、そして、当該出願人は特許のクレームを修正する機会を持ちます。若し、審査官が出願に合意した場合、EPC特許は付与され、そして、当該特許の証明書が発行されます。新たに付与されたEPC特許は、欧州特許広報(European Patent Bulletin)におけるその公示から始まり有効となります。

  • National phase 国内段階

    上記の如く、EPC特許制度は単なる統一された特許出願及び審査にすぎません。そして、EPC特許自身は指定されるEPC加盟国において自動的に執行可能となりません。むしろ、指定する夫々の国々において“有効化”の手続きが求められます。EPCに沿って設立された当該手続きは、国ごとに異なり得ます。

    上記の“有効化”は、EPC特許が付与された後、3ヶ月以内(又は、関連する法令に規定される3ヶ月より長い期間)に、指定される夫々のEPC国の公用語の特許明細書(又は、いくらかの国については、特許のクレーム)の翻訳を提供し、当該EPC国の特許当局への申請を以て成されるものとします。

    EPC特許は出願日から20年間有効です。夫々の国々において当該特許の有効性及び執行可能性を保持する為、指定される夫々の国において毎年更新費用が支払われる必要があります。

  • Opposition 異議

    EPC特許が付与された後9ヶ月の間に、如何なる第三者は当該特許に対して異議を申し立てることが出来ます。当該異議は、EPOによって取り扱われ、そして、約70%の異議のケースで特許の有効性が支持されております;当該率は、若し、EPO決議に対する異議が申し立てられた場合は50%に落ちます。

Statistics 統計

2004年、178,600のEPC出願が申請され、その内の45%が認められました。EPC特許を得るまでの必要時間の平均は、約46.2ヶ月でした。

全ヨーロッパに係る特許保護戦略につきましては、EPC制度は単純化されたっ続き及び廉価な費用の性質から特許権者に有利であります。

リーアンドシュベアブロック ドイツ法律事務所はEPC特許出願及び関連手続きに係るサービスを提供いたします。更なる詳細につきまして是非、私たちにご連絡下さい。